電源の逆接保護回路について考える
概要
かなり基礎的な部分ですが、逆接保護回路の種類とメリット・デメリット、以前から気になっていた点を整理してみました。
逆接保護回路①:ショットキーバリアダイオード
よくあるやり方ですね。電源に対して直列にダイオードを入れる方法です。
メリット | ・ダイオードを入れるだけなので手軽に実装できる ・気にすべきパラメータが電圧、電流、電圧降下の3つと他の方法より少ない |
デメリット | ・電源電圧が下がってしまう |
シミュレーションでは秋月電子で手に入る1N5819を使用しました。
※100kの抵抗は実際に動かしたいIC・LED・モーター等だと思ってください。
2Vを印加したときの出力は約1.687Vとなっています。この回路には電流がほとんど流れないため100k抵抗の電圧降下は無視できるので、電圧降下=ダイオードの順電圧になります。
このダイオードの後にレギュレータやDC-DCコンバータを入れ、電源電圧を十分に上げれば問題ありません。
ただ、USB電源で5VのICを使いたい!という場合は、この電圧降下が問題になってきます。
逆接保護回路②:PchのパワーMOSFET
FETを使用する方法です。電源電圧を落としたくない時、大電流を扱うときに便利です。
メリット | ・電圧降下が少ない ・大電流に対応しやすい |
デメリット | ・部品点数が増える ・配線が若干複雑になるので配線の途中に入れるのは不可能 |
シミュレーションでは2SJ681(Q)に基本特性が近いSi9407AEYを使用しました。
ゲート・ドレイン間には静電気対策用に100kΩを入れています。これがあれば静電気でゲートに変な電圧がかかっても100kΩを流れて放電してくれるので安心です。100kΩの代わりにツェナーダイオードを向かい合わせにしたものを入れるとより丁寧ですね。
特性 | 2SJ681(Q) | Si9407AEY |
---|---|---|
ドレイン・ソース間の最大電圧 | -60V | -60V |
ドレイン・ソース間オン抵抗 | 160mΩ | 150mΩ |
ゲート入力電荷量 | 15nC | 18nC |
0~1.2V辺りで電圧降下しており、その後はほぼ同じ電圧になっています。
これは電圧が1.2VまではFETの寄生ダイオードで導通しており、1.1~1.2V辺りでゲート・ドレイン間電圧がしきい値を超えて挙動が変わり、1.8V辺りでFETが完全にONになっています。2Vの時の出力電圧は約1.940Vと電圧降下はほぼありません。
FETがONになった後の電圧降下は、FETのON抵抗・負荷抵抗10Ωの分圧になります。
※厳密には単純な分圧ではないので、分圧の計算結果とは完全には一致しません。
2 x 10 / (10 + 0.15) = 1.970
逆接保護回路②のMOSFETにゲート抵抗は必要?
個人的に今回の本題です。いろんなサイトで紹介されている逆接保護回路ですが、MOSFETにゲート抵抗を入れている例は見つかりませんでした。
この構成でリンギングしてもパスコンを入れれば回路の電源としては問題ないのですが、FETの負担にはならないのか…?と気になったので調べてみました。
あれ…?こんなもん?
回路電流を1Aまで増やして、電源の立上り時間を1ピコ秒まで小さくしたんですが、4.8V程度のサージが1回だけ。
もっと跳ねるものだと思ってたんですが、意外と大したことない結果。これならゲート抵抗なしでも大丈夫ですね。
実際の回路でも測定してみたいんですが、自宅のオシロは帯域250Mhzなので無理ですね。
ていうかこのサージを測定できるオシロって存在するんでしょうか?
ゲート抵抗に関するまとめ
今回シミュレーションした回路では不要という結論になりました。
ただし、逆接保護と合わせてFETの電源スイッチを入れる場合は、ONのタイミングを制御するために入れるべきかもしれません。
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