Amazonのバッテリー保護回路を調べる

技術開発

概要

Amazonで購入した2S用バッテリー保護回路を使って回路を組んだところ、何らかの条件でエラーになって放電電流を遮断する問題が発生してしまいました。
購入ページにもざっくりとしか説明がなく、Google検索でも大した情報がないので、保護ICのデータシートを探してリバースエンジニアリングしてみました。

◆購入先リンク
https://www.amazon.co.jp/dp/B08CV2VS8G?ref_=cm_sw_r_cp_ud_dp_CWD7PNDDTG213J07M813

回路図を起こす

まずは各部品の印字内容、配線から回路図を起こしてみました。
おそらく下記の回路になっていると思われます。

U1の印字内容がデータシートと異なっているので自信はないですが…。正規品の推奨回路と全く同じ構成なのでICの型式は合っているはず?おそらく互換品を使っているのではないかと推定しています。

正規品の印字内容
(データシートより引用)
現物の写真
「2120-CB」と書いてある…?

保護回路の仕様

HY2120のデータシートを翻訳していきます。
回路の動作に関係なさそうな項目は省略しています。

概要

◆Google翻訳
一連のHY2120ICは、2セルリチウムイオン/リチウムポリマー充電式バッテリー保護用に最適に作成されており、高精度の電圧検出器と遅延回路も備えています。 これらのICは、過充電、過放電、過電流の問題から2セル充電式リチウムイオン/リチウムポリマーバッテリーパックを保護するのに適しています。

ここはとりあえず問題なさそうですね。

絶対最大定格

ここも通常使用する分には大丈夫そうですね。ODとOCの設定があるのはなぜだろう…

電気的特性

長いので一部省略します。
必要な情報があれば随時追加します。

SymbolConditionMin.Typ.Max.Unit
VSIPVDD-VSS=7.0V0.61.01.4V
TOC70010001300ms
TOD70110150ms
TDIP61014ms
TCIP4710ms
TSIP0.150.250.4ms

操作の説明

ここからが本番ですね。ICの使い方に関する記述となります。
以後、typ値で条件を確認していきます。

通常のステータス

◆Google翻訳
このICは、VDDピンとVSSピンの間に接続されたバッテリの電圧とCSピンとVSSピンの電圧差を監視して、充電と放電を制御します。 セル1とセル2の電圧が過放電検出電圧(VDLn)から過充電検出電圧(VCUn)の範囲にあり、CSピン電圧が充電過電流検出電圧(VCIP)から放電過電流検出電圧(VDIP)の範囲にある場合 )、ICは充電と放電の両方の制御MOSFETをオンにします。 この状態を通常状態と呼びます。 この状態では、充電と放電の両方を自由に行うことができます。 
注意:バッテリーを初めて接続したときは、放電が行われない場合があります。 通常の状態に戻すには、CSとVSS PINを短絡するか、充電器を接続する必要があります。

充電・放電共に有効になっているモード(Q1、Q2がONになっている状態)の説明です。
下記の条件をすべて満たす場合にこのモードになるようです。

  • バッテリー1およびバッテリー2の電圧が、2.90[V]以上、4.28[V]以下である。
  • CS・VSS間の電圧が、-0.21[V]以上である。
    ⇒充電電流が大きくなるとFETのON抵抗と寄生ダイオードにより電圧降下が発生し、B+・B-間の電圧が小さくなります。
     具体的に何Aでこの条件から外れるかについては、寄生ダイオードの挙動が勉強不足でわかりません。。。
     おそらく8A+αくらいで条件から外れるようにFETを選定されていると思われます。
  • CS・VSS間の電圧が、0.2[V]以下である。
    ⇒上記同様の理由で放電電流が大きくなるとB+・B-間の電圧が大きくなります。

要するに過充電、過放電、充放電の過電流のどれにも当てはまらない状態ですね。

過充電状態

Characteristic CodeがAなので、Overcharge release code 1となります。

◆Google翻訳
いずれかの電圧が過充電検出器電圧(VCUn)以上になった場合の、VDDピンとVCピンの間のバッテリ電圧(セル1の電圧)およびVCピンとVSSピンの間の電圧(セル2の電圧)の通常の状態 )、および過充電遅延時間(TOC)を超え続けると、外部充電制御Nch MOSFETがオフになり、OCピンは「L」レベルになります。 過充電をリセットし、過充電を検出した後、OCピンレベルを再び「H」にするには、Cell1とCell2の両方が過充電電圧よりも低いレベルに低下したときに、ある種の負荷をVDDに接続します。 充電器をバッテリーパックから外します。 すると、OCピンの出力電圧が「H」になり、外部Nch MOSFETがONし、充電サイクルが可能になります。 つまり、過充電が検出されると、供給電圧が十分に低くなっても、充電器をバッテリーパックに接続し続けると、再充電できません。

バッテリーが十分に充電され、充電をストップする時のモードです。
バッテリー1・バッテリー2のどちらかの電圧が4.28[V]を超えた状態が1000[ms]以上続くと、Q2がOFFとなって電流を遮断します。

解除するには、まず充電器を外し、その後に負荷をつなげて放電させ、バッテリー電圧が4.08[V]以下になると通常状態に戻ります。
※Q2がOFFになっていても、寄生ダイオードがあるので放電は有効になっています。

過放電状態

Characteristic CodeがAなので、Products with Power-down Functionとなります。

◆Google翻訳
通常動作モードのバッテリ、VDDとVCピンに接続されたセル1の電圧、またはVCとVSSピンに接続されたセル2の電圧は、過放電検出電圧(VDLn)よりも低くなり、モードは過放電検出遅延時間(TOD)より長く続きます。 )放電中、HY2120シリーズはODピン出力電圧をハイレベルからローレベルに切り替え、放電制御MOSFET(ODピン)をオフにして放電を停止します。この状態を「過放電状態」といいます。 MOSFETがオフの場合、CSピンの電圧はICの内部抵抗によってVDDにプルアップされ、ICの消費電力値をスリープモードの値(<0.1uA)に減らします。この状態を「スリープモード」と呼びます。過放電状態は、以下の2つの場合にリースされます。 ODピンの出力電圧が低レベルから高レベルに変化し、放電制御MOSFETを導通させます。
(1)充電器接続時にCSピン電圧が充電過電流検出電圧(VCIP)より低くなると、セル1とセル2の電圧が過放電検出電圧(VDLn)より高くなると、過放電状態が解除され、通常動作モードに戻ります。
(2)充電器接続時にCSピン電圧が充電過電流検出電圧(VCIP)より高い場合、セル1とセル2の電圧が過放電解除電圧(VDRn)より高くなると、過放電状態が解除され、通常動作モードに戻ります。 

バッテリーが容量の限界まで放電され、放電をストップする時のモードです。
バッテリー1・バッテリー2のどちらかの電圧が2.90[V]未満の状態が110[ms]以上続くと、Q1がOFFとなって電流を遮断します。
このときICはスリープモードに入り、消費電流が0.1[uA]未満になります。

解除するには、以下のどちらかを満たす必要があります。
※Q1がOFFになっていても、寄生ダイオードがあるので充電は有効になっています。

  • 充電器を接続しており、充電電流が閾値以下、且つバッテリー1とバッテリー2の電圧がどちらも2.90[V]より高くなる。
  • 充電器を接続しており、充電電流が閾値を超え、且つバッテリー1とバッテリー2の電圧がどちらも3.00[V]より高くなる。

放電過電流状態(放電過電流および短絡)

◆Google翻訳
ICは、バッテリが正常に動作しているときのCSピン電圧を調べることにより、放電電流を継続的に監視します。 CSピンの電圧が放電過電流検出電圧(VDIP)の電圧を超え、この状態が放電過電流遅延時間(TDIP)より長く続くと、ODピンの電圧出力が高電位から低電位に変化すると、MOSFET(ODピン)が無効になり、放電が停止します。この状態を「放電過電流状態」といいます。 CSピンの電圧が短絡検出電圧(VSIP)を上回り、この状態が短絡遅延トーム(TSIP)より長く続くと、ODピンの電圧出力が高電位から低電位に変化します。このとき、MOSFET(ODピン)は無効になり、放電は停止します。この状態を「短絡状態」と呼びます。 PB +とPB-間の接続インピーダンスが450kΩ(typ。)を超えると、放電過電流状態と短電流状態が解除されます。また、充電器を接続すると、PB +とPB-間のインピーダンスが450kΩ(typ。)より低く、CSピン電圧が放電過電流検出電圧(VDIP)より低くても、放電過電流状態または短絡状態が解除されます。そして通常の動作モードに戻ります。

いわゆる過電流保護です。放電電流が大きくなると、FETでの電圧降下が大きくなってVSS・CS間の電圧が上がります。
CSの電圧が0.2[V]以上の状態が10[ms]以上続く、若しくは1.0[V]以上の状態が0.25[ms]以上続くとこのモードに入ります。

解除するには以下のどちらかを満たす必要があります。

  • 回路図のP+・P-間の抵抗値が450[kΩ]以上になる。 ⇒負荷の接続を外す
  • 放電電流を8A以下?にした状態で充電器を接続する。

過電流状態の充電

◆Google翻訳
CSピン電圧が充電過電流検出電圧(VCIP)より低く、この状態が通常動作時のバッテリーの充電プロセス中に充電過電流遅延時間(TCIP)より長く続くと、OCピン電圧出力は高電位から低電位に変化します。 このとき、MOSFET(OCピン)は無効になり、充電は停止します。 このステータスは「ChargeOvercurrentStatus」と呼ばれます。 充電過電流状態に入った後、充電器を外してCSピン電圧が充電過電流検出電圧(VCIP)より高くなると、充電過電流状態が解除され、通常の動作モードに戻ります。

充電電流の過電流保護です。充電電流が閾値以上の状態が7[ms]以上続くと、Q2をOFFにして充電を停止します。

解除するには充電器を外し、充電電流を閾値以下にします。

まとめ

とりあえずリチウムイオンバッテリーの発火を防ぐ機能はそろえている、という印象でした。エラーの解除も専用のスイッチや回路なしで出来そうです。
ただ、電流制御が無いので充電電流が大きくなりすぎてバッテリーの負担になったりしないのか…?と気になっています。